オフショア法人を設立すると本当に節税対策になるのかは、経営判断の重要な検討材料となります。
経営者であれば、できるだけ利益が多く残る形で法人を運用したいのは当然です。とはいえ、リスクを冒したり、失敗したりするのは避けたいのが心情でしょう。
この記事では、オフショア法人の設立が節税対策になるのかを解説します。基礎情報に加えてメリット・デメリットもお伝えするため、健全な法人運用のきっかけが掴めます。ぜひ最後までご覧ください。
オフショア法人を設立すると本当に節税対策になるのか
オフショア法人を設立することで、節税対策を行うことが可能です。
オフショア法人は、国外の収益が非課税になったり、低税率が適用されます。日本国内では普通法人の場合、23.2%の法人税が課されます。法人住民税や法人事業税まで含めると、実際の税率は30%前後です。オフショア法人であれば、これらの税金を非課税、もしくは低く抑えることができます。
ただし、オフショア法人は節税対策にはなりますが、活用の際は十分な注意が必要です。
その理由として、タックスヘイブン対策税制の厳格化が挙げられます。タックスヘイブン対策税制によって、不当に資産を隠したり脱税を行うことに対して厳しく取締りが実施されるようになりました。オフショア法人はあくまでもルールに沿った形で活用する必要があるので注意してください。
オフショア法人の基礎知識
オフショア法人とは、登記を行った国以外でビジネス活動を行う企業を指します。
オフショア法人は海外の現地法人と混同されやすいですが、海外現地法人の場合は現地の国内で法人活動を実施します。オフショア法人のように域外で法人活動をすることはありません。混同を防ぐために、海外の現地法人をオンショア法人と呼ぶこともあります。
オフショア法人設立のメリット
オフショア法人を設立するメリットとして、下記の3点が挙げられます。
- 節税ができる
- 機密保持性が高い
- 資産保護になる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
節税ができる
オフショア法人を設立することで節税ができます。繰り返しにはなりますが、日本の場合は法人税などで収益の約1/3ほどが国に持っていかれてしまいます。
国にもよりますが、オフショア法人は法人税が非課税になったり、日本よりも低税率が適用されます。収益を税金でもっていかれるのを防げるので、より多く収益分を残すことが可能です。
機密保持性が高い
オフショア法人は、法人情報の機密性も高いです。
日本で法人登記をする場合、取締役の氏名・住所などの情報を登記情報に記載しなければなりません。登記情報は公開され、一般人でも確認できます。
これに対して、オフショア法人であれば取締役の氏名・住所記載が必要のない地域もあります。取締役の情報が公開されない分、訴訟のリスクを抑えることが可能です。
また実際のオーナーの活動を隠せるので、機密保持性を高くしてビジネスを行いたい際に最適といえるでしょう。
資産保護になる
オフショア法人は資産保護の観点でも優れています。
たとえば、私的管轄区域であれば、外国政府に口座情報が開示されません。口座名義や入金・出金額が政府に知られないため、保有資産のプライバシーを守ることが可能です。
またオフショア法人を通じて海外金融機関の口座を保有すれば、資産保有のリスク分散の面でも対策可能です。
オフショア法人設立のデメリット
オフショア法人の設立のデメリットとして、下記の3点が挙げられます。
- 海外移住が必要
- コストがかかる
- 相続の問題がある
それぞれ詳しく解説していきます。
海外移住が必要
オフショア法人を節税対策で活用する場合、海外移住が必須になります。
というのも、現在の日本の税制では、国内在住者が海外で得た所得も申告が必要なためです。
当然ながら、申告した海外所得は課税対象になります。このため、日本国内に在住したままオフショア法人を設立しても節税対策にはならないのです。
国内での課税を回避するためには、海外移住が必要になります。日本から海外に移住すれば、海外での所得を日本国内で申告する必要がありません。
ただ、すでに国内でビジネスの拠点を持っている場合は、なかなか海外移住は難しいでしょう。節税対策の恩恵と、海外移住のデメリットを比較した上で、最終的に移住するかどうか決定するのがおすすめです。
コストがかかる
オフショア法人は、設立費用や維持費用がかかります。設立費用は法人・法人口座のセットで100万円前後です。
維持費用に関しては、年額で約20万~50万円ほどの費用が発生すると考えてください。
収益・所得に対する税金がかからない点はオフショア法人の魅力ですが、コストを踏まえた上で設立を検討しなければなりません。コストを差し引くと収益がほとんど残らない場合、安易にオフショア法人を設立するのは避けた方がよいでしょう。
相続の問題がある
オフショア法人では相続の問題も発生します。
これまでは、海外に5年以上移住すれば国外財産は相続税の課税対象外でした。
ただ、現在の税制では、日本国籍の人の場合は10年以上移住しないと相続税の課税対象外になりません。この条件は財産の所有者(被相続人)のみならず、相続人側も満たす必要があります。
また海外の財産を相続する場合、現地の裁判所の承認が必要であったり、相続の対応を現地の裁判所と行う必要が出てきます。国内の相続対応よりも複雑になりやすいため、注意が必要です。
オフショア法人の設立手順
オフショア法人の設立手順は、大まかに下記の流れになります。
- 海外で登記する会社の社名を決める
- 設立する国・地域のルールに沿って、必要書類を作成する
- オフショア法人の登記を行う
- 現地の法人口座を開設する
書類だけの準備であれば、1~2カ月ほどで設立可能です。またオフショア法人設立の過程で口座も一緒に作れる国・地域もあります。
自力で設立手続きを行うのが難しい場合は、オフショア法人設立の代行会社を利用するのもおすすめです。
代行会社に依頼すれば、各種手続き・書類作成をすべて任せることが可能です。また法人維持の代行を請け負ってくれるところもあります。設立代行を依頼する際に合わせて確認してみましょう。
オフショア法人が設立できる国
オフショア法人を設立できる国・地域の代表例として、下記の5つが挙げられます。
- セーシェル:インド洋に浮かぶ島々で構成されたイギリスの連邦国家
- ケイマン諸島:カリブ海に浮かぶ島々で構成されたイギリスの連邦国家
- ベリーズ:中央アメリカに位置する国
- ラブアン(マレーシア):マレーシアに置かれている経済特区
- BVI(イギリス領ヴァージン諸島):カリブ海に浮かぶ島々で構成されたイギリスの連邦国家
各国・地域のオフショア法人のメリットは下記の通りです。
国名 | メリット |
---|---|
セーシェル | 所得が非課税、税務申告・取締役会の開催義務なし |
ケイマン諸島 | 法人税、並びに個人税が非課税、年次報告の必要なし |
ベリーズ | 政府に収める納付金を除き非課税、決算・会計監査なし、株主1人・役員1人で設立可能 |
ラブアン | 法人税率は持株会社の場合は非課税、事業会社は3% |
BVI | 収益に対する税金は非課税、法人の活動に制限がない |
各国・地域によって法人設立の条件や手続きが変わってきます。オフショア法人を設立したい国のルールに合わせて、各種準備を進めていきましょう。
注意点としては、オフショア法人の設立が可能な国・地域は犯罪の温床になりやすい点が挙げられます。闇マーケットや金融詐欺、サイバーテロなど各種金融犯罪に注意が必要です。
オフショア法人以外の節税対策
オフショア法人の設立以外にも、効果的な節税対策がいくつかあります。代表的な節税対策は下記の2つです。
- ドバイのフリーゾーンで法人を設立する
- アメリカの無税州で法人を設立する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ドバイのフリーゾーンで法人を設立する
ドバイのフリーゾーンは経済特区として設定されている地域です。
フリーゾーンで法人を設立すれば、法人税がゼロになります。オフショア法人のように国外での経済活動に限定されることもありません。ドバイはアフリカ・ヨーロッパからも地理的に近く、海外ビジネスの拠点としても最適でしょう。
アメリカの無税州で法人を設立する
アメリカの無税州で法人を設立するのもおすすめです。アメリカでは、下記に挙げる州において州所得税が非課税となっています。
- アラスカ
- フロリダ
- ネバダ
- サウスダコタ
- テキサス
- ワシントン
- ワイオミング
また、ニューハンプシャー州とテネシー州は、キャピタルゲインなどの投資所得のみが課税対象となっていますが、その他の所得は非課税です。
アメリカは先進国ということもあり、金融犯罪などのリスクが他の国・地域よりも低い傾向です。安全面を重視して節税対策を行いたい場合は、アメリカの無税州を活用するのもおすすめといえるでしょう。
まとめ
オフショア法人を設立することで、法人税や相続税などの節税対策を行えます。国・地域にもよりますが、必要書類を準備すれば1~2カ月ほどでオフショア法人を設立できるケースも多いです。
節税の恩恵を受けるには海外移住が必要になりますが、節税メリットが大きい場合は思い切って移住うするのも選択肢に入れて良いでしょう。
本記事の内容を参考にして頂き、オフショア法人の設立について理解を深めて頂けますと幸いです。
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