ドバイで不動産を購入・投資する際に、必ず目にする「RERA」という言葉。RERAは不動産取引の透明性と安全性を担保するドバイ政府の規制機関であり、投資家の資金を守るエスクロー制度や、テナントを保護する家賃規制など、ドバイ不動産市場の信頼性を支える根幹です。
2026年現在、ドバイの不動産取引件数は過去最高水準を記録しており、海外からの投資家も急増しています。こうした市場の成長を支えているのが、RERAによる厳格な規制と投資家保護の仕組みです。この記事では、日本人投資家が知っておくべきRERAの役割・制度・活用方法を網羅的に解説します。
この記事でわかること
- RERAとは何か、DLD(ドバイ土地局)との関係
- エスクロー口座による投資家保護の仕組み
- 不動産エージェント・ブローカーのライセンス制度
- テナント保護と家賃値上げ規制(スマートレンタルインデックス)
- オフプラン物件の規制とプロジェクト登録義務
- RERA登録番号の確認方法(Dubai RESTアプリ)
- 紛争解決の手続きと違反時の罰則
目次
RERAとは?ドバイ不動産規制庁の基本
RERA(Real Estate Regulatory Agency)は、ドバイの不動産市場を規制・監督する政府機関です。2007年に設立され、ドバイ土地局(DLD:Dubai Land Department)の傘下で運営されています。
ドバイの不動産市場は2000年代に急成長しましたが、規制の未整備による詐欺やプロジェクト遅延が問題となっていました。RERAはこうした課題を解決するために誕生し、現在ではドバイの不動産取引全般を管轄する中核的な規制機関として機能しています。
DLD(ドバイ土地局)との関係
DLDはドバイ首長国の不動産に関する最上位の政府機関であり、RERAはその規制部門(Regulatory Arm)という位置づけです。両者の役割を整理すると以下の通りです。
| 機関 | 主な役割 |
|---|---|
| DLD(ドバイ土地局) | 不動産の登記・移転手続き、DLD登録料(物件価格の4%)の徴収、市場データの管理 |
| RERA(不動産規制庁) | デベロッパー・ブローカーのライセンス管理、エスクロー口座の監督、賃貸契約の規制、紛争調停 |
簡潔に言えば、DLDが「不動産の登記・管理」を担当し、RERAが「不動産市場の規制・監督」を担当するという分担です。投資家にとっては、物件購入時にDLDへの登記、日常の取引やトラブル対応はRERAの管轄となります。
ドバイの不動産市場は、DLDとRERAの二重チェック体制で運営されています。日本人投資家にとっても、この規制の透明性がドバイ不動産の大きな安心材料です。
RERAの主な役割と権限
RERAの管轄範囲は多岐にわたります。不動産市場の健全な発展を支えるために、以下の領域で規制・監督を行っています。
デベロッパーとプロジェクトの登録管理
ドバイで不動産開発を行うデベロッパーは、RERAへの登録とライセンス取得が義務付けられています。また、すべてのオフプラン(建設前販売)プロジェクトは、販売開始前にRERAに登録し、承認を受ける必要があります。
この制度により、未登録のデベロッパーによる不正な販売活動や、実体のないプロジェクトの販売が防止されています。
不動産エージェント・ブローカーのライセンス
ドバイで不動産仲介業を行うには、RERAが発行するブローカーライセンスの取得が必須です。個人のエージェントにはBRN(Broker Registration Number)が付与され、すべての物件広告や取引書類にBRNの記載が義務付けられています。
エスクロー口座の監督
オフプラン物件の購入代金は、デベロッパーが直接受け取るのではなく、RERAが監督するエスクロー口座(信託口座)に預けられます。この仕組みにより、購入者の資金が建設以外の目的に流用されるリスクを防いでいます。
賃貸市場の規制
すべての賃貸契約はEjari(エジャリ)システムでの登録が義務化されています。また、RERAが運営するスマートレンタルインデックスにより、家賃の値上げ幅が制限されています。
紛争解決と罰則の執行
不動産取引に関するトラブルが発生した場合、RERAは調停サービスを提供しています。また、規制に違反したデベロッパーやブローカーに対し、罰金やライセンス停止などの処分を行う権限を持っています。
エスクロー口座制度:投資家の資金を守る仕組み
ドバイの不動産投資において、エスクロー口座制度は投資家保護の最も重要な柱です。特にオフプラン物件を購入する際には、この制度の理解が不可欠です。
エスクロー口座の仕組み
2008年施行のDubai Law No. 8(エスクロー法)および2017年のLaw No. 13に基づき、オフプランプロジェクトを販売するデベロッパーは、プロジェクトごとに専用のエスクロー口座を開設する義務があります。購入者が支払う代金はすべてこの口座に入金され、建設の進捗に応じて段階的にデベロッパーへ放出されます。
エスクロー口座の主なルール
- 購入者の全額がエスクロー口座に入金される
- 資金は建設の進捗マイルストーンに応じて段階的に放出
- エスクロー口座の開設にはRERAの承認が必要
- プロジェクト完了後も1年間、総額の5%が保証金として口座に留保される
- デベロッパーは建設工事の20%完了後にエスクロー口座を有効化できる
保証金(ワランティリザーブ)
プロジェクト完了後も、エスクロー口座にはプロジェクト総額の5%が1年間保持されます。この期間中に建物の構造的な欠陥や品質問題が発見された場合、RERAはこの保証金を使って修繕を命じることができます。デベロッパーが修繕を拒否した場合も、この資金が購入者の保護に活用されます。
エスクロー制度のおかげで、ドバイのオフプラン投資は他の新興国と比べて格段に安全です。ただし、エスクロー口座番号はDubai RESTアプリで確認できますので、購入前に必ずチェックしましょう。
不動産エージェントのライセンスとBRN確認方法
ドバイで不動産取引を行う際、信頼できるエージェント選びは極めて重要です。RERAはエージェントのライセンス制度を通じて、業界の品質管理を行っています。
ブローカーライセンスの種類
ドバイの不動産仲介に関わるライセンスには、主に以下の種類があります。
| ライセンス | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| ブローカーライセンス | 不動産仲介会社 | 法人として不動産仲介業を営むための許可。ORN(Office Registration Number)が付与される |
| エージェントライセンス | 個人のエージェント | 不動産仲介を行う個人に付与。BRN(Broker Registration Number)が発行される |
| デベロッパーライセンス | 不動産開発事業者 | 不動産の開発・販売を行うための許可 |
BRN・ORNの確認方法
エージェントやブローカーが正規にライセンスを取得しているかは、以下の方法で確認できます。
- Dubai RESTアプリ:DLDが提供する公式アプリ(iOS / Android)。「Inquiry」セクションからBRNまたはORNを入力すると、ライセンスの有効性、所属会社、活動内容がリアルタイムで確認できます
- DLD公式サイト:dubailand.gov.aeの「Verify License and Permits」ページで、ライセンス番号を入力して照会できます
- E-Card Verification:RERAが発行する電子カードの有効性を、Dubai RESTアプリ上で確認できます
ライセンスを持たないエージェントとの取引は法的保護を受けられないリスクがあるため、取引前に必ず確認することを強く推奨します。詳しいエージェント選びのポイントや不動産詐欺の対策方法も併せてご確認ください。
テナント保護とスマートレンタルインデックス
ドバイの賃貸市場では、RERAによるテナント保護制度が整備されており、家賃の過度な値上げや不当な立ち退きから借主を守る仕組みがあります。投資家にとっても、賃貸運用する際のルールとして理解しておくべき制度です。
Ejari(エジャリ)登録制度
ドバイではすべての賃貸契約をEjariシステムに登録することが義務付けられています。Ejariとはアラビア語で「私の賃貸」を意味し、RERAが運営するオンラインの賃貸契約登録プラットフォームです。登録された契約は法的拘束力を持ち、紛争時の証拠としても機能します。
家賃値上げ規制(レンタルインデックス)
2026年現在、ドバイではスマートレンタルインデックスが導入されており、AIとリアルタイムの市場データを活用して家賃の適正水準を算出しています。家賃の値上げは以下のルールに従う必要があります。
| 現在の家賃と市場平均の差 | 最大値上げ幅 |
|---|---|
| 市場平均より10%以内の差 | 値上げ不可(0%) |
| 市場平均より11〜20%低い | 最大5% |
| 市場平均より21〜30%低い | 最大10% |
| 市場平均より31〜40%低い | 最大15% |
| 市場平均より40%以上低い | 最大20% |
2026年のスマートレンタルインデックスの特徴
2026年のスマートレンタルインデックスでは、四半期ごとに更新されるデータに加え、建物の品質格付け(1つ星〜5つ星)も考慮されるようになりました。AIが物件の技術的・サービス的側面を分析し、より精緻な賃料評価を提供しています。これにより、貸主・借主双方にとって公平な賃料設定が実現されています。
オフプラン物件の規制とプロジェクト登録
ドバイの不動産市場ではオフプラン(建設前)物件への投資が活発です。RERAはオフプラン取引において、購入者の利益を保護するための厳格な規制を設けています。
プロジェクト登録の義務
デベロッパーがオフプラン物件を販売するには、事前にRERAへプロジェクトを登録し、承認を得る必要があります。登録にあたっては、以下が求められます。
- 土地の所有権または開発権の証明
- 建設許可の取得
- プロジェクト専用のエスクロー口座の開設
- 建設スケジュールと完成予定日の提出
- 広告内容のRERAによる事前承認
未登録のプロジェクトの販売は違法であり、RERAは定期的な市場監視を通じて不正な販売活動を取り締まっています。
広告規制
RERAは不動産広告にも厳格な規制を設けています。すべての物件広告にはQRコードの掲載が義務付けられており、これを通じて物件の登録情報やエージェントのライセンス情報を確認できます。QRコードの未掲載には最大50,000AED(約210万円)の罰金が科されます。
デベロッパーの選び方や実績の確認も、安全なオフプラン投資には欠かせません。
紛争解決の手続き
不動産取引でトラブルが発生した場合、ドバイにはRERAを通じた紛争解決の仕組みが整備されています。
賃貸紛争解決センター(RDC)
賃貸に関する紛争は、賃貸紛争解決センター(Rental Disputes Centre:RDC)が管轄します。RDCは2013年のDecree No. 26に基づいて設立された専門機関です。
紛争解決の流れは以下の通りです。
- 調停フェーズ(15日間):まず両者間の調停が行われます。RDCのデータによると、約40%の案件がこの段階で解決しています
- 裁定フェーズ(30日間):調停で解決しない場合、裁判官が審理し、通常30日以内に判決が下されます
- オンライン手続き:2026年現在、苦情の申立て・書類提出・ヒアリング出席・進捗確認はすべてオンラインで完結可能です
売買に関する紛争
売買取引に関する紛争(プロジェクトの遅延、品質問題、契約違反等)については、RERAが調停サービスを提供しています。調停で解決しない場合はドバイの裁判所で争うことになります。
違反と罰則制度
RERAは規制違反に対して厳格な罰則を設けており、市場の健全性を維持しています。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 無許可での不動産広告掲載 | 10,000AED(約42万円)の罰金 |
| 広告へのQRコード未掲載 | 50,000AED(約210万円)の罰金 |
| エスクロー口座の不正使用 | 50,000AED(約210万円)の罰金 |
| 繰り返しの違反 | 100,000AED(約420万円)の罰金+ライセンス停止・取消 |
2024年にはRERAの罰金徴収額が1,200万AED(約5億400万円)を超えており、実効性のある規制が行われています。ブローカーカードの3か月以上の停止処分や、ブラックリスト登録といった厳しい措置も講じられています。
日本人投資家がRERAで確認すべき5つのポイント
日本人投資家がドバイで不動産を購入する際に、RERAの制度を活用して安全な取引を行うためのチェックポイントをまとめます。
1. エージェントのBRN・ORNを事前確認する
取引を開始する前に、Dubai RESTアプリまたはDLD公式サイトで、担当エージェントのBRN(個人番号)と所属会社のORN(法人番号)を確認しましょう。ライセンスが有効であること、所属会社が正規に登録されていることを必ず確かめてください。
2. オフプラン物件はRERA登録を確認する
オフプラン物件を購入する場合、そのプロジェクトがRERAに正式登録されているか確認することが最も重要です。Dubai RESTアプリでプロジェクト名やデベロッパー名を検索すると、登録状況を確認できます。
3. エスクロー口座番号を確認する
支払い前に、プロジェクトのエスクロー口座が有効であることを確認しましょう。デベロッパーの個人口座や会社の一般口座への振込を求められた場合は、詐欺の可能性があるため絶対に応じないでください。
4. 賃貸運用時はEjari登録を徹底する
物件を賃貸に出す場合、必ずEjariシステムで賃貸契約を登録してください。未登録の場合、紛争時に法的保護を受けられない可能性があります。
5. トラブル時はRDCに相談する
賃貸に関するトラブルが発生した場合、賃貸紛争解決センター(RDC)にオンラインで苦情を申し立てることができます。手続きはすべてオンラインで完結し、多くのケースが1〜2週間で解決されています。
ドバイの不動産投資は、RERAの規制がしっかり機能しているからこそ安心して取り組めます。購入前のDubai RESTアプリでの確認を習慣にしてください。不明点があれば、セミナーで詳しくご説明しています。
2026年のRERA最新動向
2026年のRERAは、デジタル化と市場の透明性向上をさらに推進しています。
- スマートレンタルインデックスの進化:AI搭載のレンタルインデックスが四半期ごとに更新され、建物品質や立地需要も反映した精緻な賃料評価を提供
- Dubai RESTアプリの拡張:AI搭載の物件評価ツールが追加され、賃貸・売買の適正価格をリアルタイムで確認可能に
- エスクロー口座の監視強化:オフプランプロジェクトの遅延防止に向けて、より厳密なエスクロー口座の監督体制を導入
- グリーンビルディング要件:ドバイ2040マスタープランに沿った持続可能な開発基準が新たにRERA要件として導入
2026年上半期だけでもドバイの不動産取引件数は125,538件、取引総額は4,310億AED(約18.1兆円)を記録しており、RERAの規制のもとで市場は力強い成長を続けています。
まとめ:RERAはドバイ不動産の信頼性を支える基盤
RERAは、ドバイの不動産市場における投資家保護の中核機関です。エスクロー口座制度、ブローカーライセンス、賃貸規制、紛争解決といった多層的な仕組みにより、海外投資家も安心して取引できる環境が整備されています。
日本人投資家がドバイ不動産に投資する際には、Dubai RESTアプリの活用、エージェントのBRN確認、エスクロー口座の検証を必ず行いましょう。RERAの制度を正しく理解し活用することが、ドバイ不動産投資を成功させるための第一歩です。
ドバイ不動産投資の全体像を知りたい方は、ピラー記事もあわせてご確認ください。
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